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 僕は金曜日の歓迎会以来、五月さんと話す機会を増やそうと頑張った。  話す機会を増やしてみると、五月さんは全然目立たない人間のように見えるが、仕事はものすごく出来る人間だと言うことがわかった。何でもない顔をしながら、他の人間の1.5倍くらいの仕事量をこなしている。だからと言って「自分は仕事を頑張っています」という気負いもないし、「仕事が出来る」と自慢することもない。ただ、あまりにも気負いも自慢もないので、五月さんが「仕事ができる」ということに他の人の意識があまり行っていないようだった。  そして、そんな「気負い」を感じさせないのも、五月さんの魅力の一つに感じた。  僕は五月さんのことを意識し始めた頃、もしかすると五月さんはすでに結婚していたり彼氏がいたりするのではないかと気になった。それとなく他の事務所の人間に訊いてみたが、少なくとも結婚はしていないらしい。 「良い娘なんだけど、積極的な娘じゃないからね……」  と年配のパート社員の女性は言っていた。  僕は周りの人は見る目がないな、と思った。でも、僕だって、五月さんが自分と同じ生年月日でなければ、五月さんのよいところに注目しなかったかもしれない。そう考えてみると、やっぱり五月さんと出会えたのは僕に取ってものすごく良いチャンスだったんだろうな、と思った。  何日か経つうちに、僕と五月さんはどんどん打ち解けて行った。五月さんは僕に軽い冗談を言うようになってきたし、休憩の時やちょっとした時によく話すようになってきた。少なくとも、五月さんが僕に心を開いてくれているのは確かだった。  僕はそろそろ五月さんに休みの日に二人でどこかへ行かないか? と誘ってみようと思った。取りあえず、今週の金曜日に土曜日か日曜日の予定を訊いてみようと心に決めた。
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