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――まるで掌の上に舞い降りた六花のように儚く消えてしまった貴方が居なくなって、もう3年が過ぎたよ。
あれから実家を出た俺は、貴方と過ごした想い出のたくさん詰まったこの家に住んでいる。ひとりで居ると、色素の薄い髪を短く刈りあげた俺をラブラドールレトリバーみたいだと言って『わんこ』と呼んでいた貴方の声が今でも聴こえてくる気がするんだ。
ねえ、今年の冬もあのときのように雪が庭を覆いつくしているよ。
ぱちぱちと火鉢の炭が爆ぜる音と濡れ縁の雪ウサギ。
貴方の作った雪ウサギを思い出しながら作ったはずなのに、何度作っても歪になった。不格好なウサギは、それでも2羽並んで幸せそうに見える。
あのときと同じような雪の夜なのに、綺麗な微笑みを浮かべていた貴方の姿だけが足りなかった――……。
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