狙い(ファウスト)

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 事件の収拾、アフターケアも早かった。それを可能としたのは、宰相シウスの手腕だろう。彼は本当に広く場を見て的確に人を動かす。  本来、近衛府団長を欠いた状態でこのような大規模なパーティーは無謀だ。犯人も捕まっていないのだから。  だがこればかりは中止にできない。地方の有力者がわざわざくるこのパーティーを中止にすれば国の弱みを見せる。そうなれば野心を持つ者が寝返る可能性も出てくる。  大きく、そして余裕を見せることが大事だ。  シウスはカール陛下の側について、客人とにこやかに会話をしている。  エルの者の容姿は美しく神秘的。人の目を引く。  同時にあの男は地方の話を聞いている。めぼしい情報を得ているのだろう、抜け目がない。  そしてファウストも立派に役割を果たしている様子だ。  事件後十分程度で飛んだ伝令で、関所に通達が走った。同時に人の補充がされたと聞く。  あれは武力が目立つが、指揮官としても有能だ。シウスほどの広い目を持たないが、状況を把握する力は強い。そしてそこからの動きが早く迷いがない。人材の育成にも熱心だ。  それにしても、さっきからとても目がいくのだ。  ホールスタッフの格好をして、ランバートがにこやかに客人の対応をする。男性には礼儀正しく穏やかに、女性には柔らかく微笑む姿はあれの器用さを見るような気がする。     
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