510人が本棚に入れています
本棚に追加
「有り難う、エリオット! 僕嬉しいよ」
そんな風に、本当に嬉しそうな顔をされるから、エリオットも言った事を引っ込めたりしない。穏やかに笑って、頷いた。
その時、正午を伝える鐘が鳴った。オスカルは名残惜しそうな顔をして立ち上がる。エリオットもそれを少し寂しく見上げた。
「夜、話できる?」
「勿論ですよ」
「良かった、それじゃあね」
そう言って歩き出していくオスカルが、城の方へと向かって少し離れていく。その背を見送り、残るお茶を飲み込もうとした、その時だった。
「うぅっ」
低く呻く声に続いて、ガタンッ! ガチャァァン! という音が響く。視線を向ければ隣に座っていた男性が苦しそうにしながら倒れ込んでいた。
「どうしました!」
「はっ、腹がぁ」
腹を押さえてくの字に体を折り曲げた男性は、苦しそうに額に脂汗を滲ませている。エリオットは駆け寄ってその体を支えた。
だが、事態はこれで終わらなかったのだ。
ガタンッ! ガチャァァン!
あちこちでそんな音が聞こえて周囲を見回すと、男女も年齢も関係のない人々が同じように倒れている。平気な人々は悲鳴を上げて、城の前は一気に混乱した。
「落ち着いてください!」
最初のコメントを投稿しよう!