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目を開けて、暗い視界に驚いた。首だけを巡らせたそこに、柔らかなクリーム色の髪が揺れて落ちた。
「…失敗」
「オスカル!」
ズルリと落ちた体が地に転がり、白い衣服と雪を赤々と染め上げる。悲鳴を上げたエリオットは周りが狭まる様に思えた。怖さに震える。その目の端に、再び銀の光があった。
「おっと!」
「!」
身動きの取れなくなっているエリオットと男の間に、小さな影が滑り込んでくる。それが下から男のナイフを受け止め払った。
「ウェイン!」
「間に合って良かった。ちょっと距離があったから」
安堵した顔でエリオットを見て、男を睨むウェイン。だが男は後退り逃げの動きを見せた。
「待て!」
追いかけるウェインは、その足下に転がってきたものが突如煙を噴いたのを見て後ろに飛び退いた。
いくつものカラフルな玉が前庭に転がり出て煙を噴く。人々は更に混乱し、悲鳴を上げて右往左往している。
その中で、エリオットはオスカルの体を抱きしめ傷に着ていた上着をあてがう。
見る間に染まるそれが、傷の深さを物語っている。十センチほどあったナイフはその柄まで体に埋まっていた。
「オスカル!」
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