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名を呼んでも反応がない。泣きながら、エリオットは震えながらも止血をしている。指先が、手が震える。怖くてたまらなくて、歯の根が合わなくなりそうだった。
「どいて」
「え?」
後ろから声をかけられて、エリオットは震えながら視線を上げる。そこには柔らかな栗色の髪を切りそろえた男性がいて、オスカルの側に腰を下ろした。
「深いね。それ使って傷を固定。すぐに治療したいから、騎士団に声かけて」
「あの…」
「まずは助けないとでしょ。騎士団の中に手術室あるでしょ? あと、血液型も分かるよね?」
手早くナイフを固定した男性はテキパキと処置をしていく。それを、エリオットは情けなく呆然とみていた。
「早く!」
「はい、こちらです!」
傷ついた左の背と腕を固定し終えた男性が叫ぶのに、エリオットは立ち上がり、オスカルの傷に触れないように抱き上げて走った。
その後を当然のように男性がついてくる。震えそうな体をどうにか前に。その心には、どうか助かってという思いばかりが巡った。
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