511人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「いえ、私はここにいます。私は騎士ではありますが、同時に医者です。その私が彼を放って自らの憎しみに飲まれては、誰がここを守るのです。それは、しません」
「ふーん、意外と冷静なんだね。でも、それならいいよ」
ニッコリ満足そうに笑ったハムレットは踵を返して歩き出す。手をヒラヒラ振っているから、おそらく帰るのだろう。
「ハムレット殿、後日改めてお礼させていただきます」
「いいよ、ランバートからもらったから。お大事にね」
そう言って、本当にいなくなってしまった。その背を見送り苦笑するランバートに、エリオットも苦笑した。
「本当に、美しい手さばきです。彼はとても鮮やかに縫合しますね」
「得意だと言っていますからね。あれで性格が良ければ、よい医者なのですけれど」
互いに苦笑してしまう。
消えていったハムレットを見送って、エリオットは手術室の隣にある処置室へと向かい、ランバートは難しい顔をしてきたファウストを出迎えて、一応の結果を伝えたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!