狙い(ファウスト)

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狙い(ファウスト)

 前庭での騒動は一応の落ち着きを取り戻した。  腹痛を訴えて倒れた者はその後一時間程度で回復し、何事もない様子となった。  建国祭を汚された事には変わりないが、カーライルとヴィンセントがすぐに動き出し、城の音楽隊を急遽表に出して大通りをパレードさせ、場をどうにか繕った。  その間にファウストは外への関所全てに人を補充して持ち物のチェックをし、逃さないように警戒はした。  だがいかんせん、犯人の顔が曖昧だ。対峙したウェインの情報では、短い銀髪につり上がった青灰色の瞳で、顔はシャープで肉付きは薄く、鋭さが目立つ者だったそうだ。  この情報を元に、暗府が消えた襲撃者の行方を追っている。  突如起こった煙と混乱する人々の中に溶け込むようにしていなくなったそいつを追えなかったのは痛かった。 「犯人はおそらく二人。エリオットを襲った者と、それを補助した者だ」 「大道芸人か」  話を聞けばあの時、ジャグリングをしていた若いピエロメイクの大道芸人がいた。風船を子供に配り、芸を披露していた。その時に使っていたとみられるボールから煙が上がったのだ。 「狙いはオスカルか」     
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