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「だろうの。前庭で腹痛騒ぎなど起こればエリオットが表に出てくる可能性は高い。そのエリオットを襲えば、オスカルにはダメージが行く。本人を傷つけずとも、エリオットが傷つけば冷静ではいられぬ故な」
卑劣な手だが、的確でもある。
オスカルは大切な者とその他を分ける傾向がある。そして大切な者を傷つけられた時には激昂する。
もしもエリオットが深い傷を負えば、あれは冷静に仕事が出来たか分からない。
「ランバートに…というよりは、治療を助けたハムレット・ヒッテルスバッハを捕まえて話を聞けた。かなり深い傷だったそうだが、それでも上手く致命傷は避けていたらしい。あれが動けない体勢のエリオットだったら、死んでいただろうと言っていた」
上から振り下ろす形でオスカルの左の背を突き刺したその傷は、エリオットが受けていたなら右の肺を突き刺すほどに深かったはずだ。それを聞いた時には流石に、冷や汗が背を伝った。
「左利きの襲撃者に、顔も分からぬピエロ姿の男。実体が掴めぬ。これでもパーティーを開かねばならぬというのが痛いの」
シウスの言葉はそのまま、ファウストも同じだった。
今夜は建国祭のパーティー。皇帝カール四世主催のものだ。
かなり大規模であり、地方の有力者も集まる。そして、この地方の有力者は既にこの城の中に入ってしまっているのだ。
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