ある赤砂嵐の日に

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 そして、そこに書き付けられた明細に視線を落とした。 「ふ…ゎ、へ?!」  くちびるから、わけの分からんおかしな声が洩れる。 「な、なな……っ、なんだ、この金額はぁ?」  すると、店主がやっと視線を上げた。 「JJ、当店としましては、常に貴方に有益な情報を提供し、様々な便宜をはかってきたところですが」 「あ? ああ、だがよぉ、別に無料(タダ)ってわけでもなかったろ? こっちだって、ちゃんと『情報料(フィー)』を払ってるわけだし」  店主が、ゆっくりと首を横に振る。 「実のところ、これまでに頂戴した金額ではお渡ししてきた情報の対価としては『著しく』不足でして。情報提供の折、相当な『特価』をご提示したことも、無論少なからずございました」  丁寧というか何というのか。  色々通り越して、もはや無礼にしか聞こえない物言いに、さすがの俺もカチンときた。 「んなこと、別に俺が頼んだわけじゃねえだろ、そっちが勝手にやったことだ」  う……いや。まあ、確かに。  「ちょっと値引いてくれよ。大物捕まえたら、絶対礼するから」とか。  そんな値下げ交渉は、もはや挨拶代わりだったかもしれないが。  っていうか、このジジイ。     
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