ある赤砂嵐の日に

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 そんなことを、もう何度か続けていたのだ。 「ここへ来て私も、これまで溜まりにたまった不払金を御完済頂くのは、もはや不可能に近いと、やっとその判断が着いたというわけです。JJ」  言ってジジイは、眼鏡をかけ直す。  そして、話を続けた。 「お支払い頂けない……となると、もはや『金銭以外』の手段で負債を清算して頂くほかはないと、そのような結論になりましょうか」 「一体全体、俺にどうしろってんだ」  もはや破れかぶれで、俺は開き直る。  すると店主は、革装の小型本を片手でパタンと閉じた。  続けて宙のヴァーチャルスクリーンに、軽く息を吹きかけ、それらを消す。  それから、おもむろに顔を上げると、斜め下からの視線で俺の顔を見据え、 「つまりは、『身体で』お支払い頂きたいと、そう申し上げる次第です」  と、超慇懃無礼なブリティッシュアクセントで言いやがった。
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