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「……気に、なんて……」
「俺まだ、返事してないんだ。なんて答えたらいいか分からなくて……さくらはどう思う?」
「……なんで、俺にそんな……」
「さくらは、どうして欲しいかと思って」
光の加減で緑に揺れる瞳が、じっと美桜を覗く。
その全てを暴くような目に息を詰める美桜を見つめ、葵は汗を掻き始めた麦茶へ手を伸ばした。
「何か、俺に言いたいことはない?」
テーブルに残る濡れた跡に葵が映り込む。
もう目を瞠るしか出来ずにいる美桜に、葵は半分ほど減ったコップを濡れた跡の通りにテーブルへ置いた。
「思ってること、望んでること……あるよな?」
「……、……ないよ、そんなの」
「さくら」
小指に絡む約束が、美桜の喉を締め付ける。
呼び掛ける声の優しさに募る想いを喉で堰き止め、美桜はきつく瞼を閉じて首を横に振った。
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