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「なぁ、美桜」
つんっと制服の襟を引かれ、美桜は視線を前に向けたまま、体を少し後ろへ倒した。
「なぁに」
「何やりたい?」
潜められた凪の声は、そわそわと落ち着きがない。
美桜は黒板に書かれた文化祭の文字を眺め、はやくも浮かれている凪の様子にすっと肩を竦めた。
「何でもいいけど、美味しいものだったらいいなぁ」
「王道だな」
「ハズレがないじゃん。なにより食べられるし」
「それは大きい。残念ながら、金券は平等だけどな」
「残念ながら」
深くため息を吐く凪に、美桜がくつくつ忍び笑う。
2人はふと目が合った担任の睨みに口を噤み、担任と交代して前に立った文化委員の姿に目を瞬かせた。
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