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「えっちゃん、お待たせー」
バンッと掃除用具入れの扉を閉めて指定鞄を肩にかけた美桜は、廊下で携帯を弄る葵に駆け寄った。
「お疲れ」
「へへ、ありがとー」
美桜よりも無骨な手がぎこちなく髪を撫でる。
頬を緩めて照れ隠しに鞄を揺らした美桜は、穏やかに目を細める葵を先導して人の少ない廊下を歩いた。
「文化祭、あっさり決まって良かったね。次はいつ集まるの?」
「今週末。各クラスの希望聞いて調整していくんだって。まぁ、うちは通るだろうなぁ……ネタだし」
「あー……かもね」
嫌そうに顔をしかめる葵に、美桜が苦笑いを漏らす。
票が集まった普通の喫茶店で十分だったのに、面白要素を求めた数人の案によって、無難な喫茶店は男女逆転喫茶へと変わってしまった。
王道はつまらないとの意見から派生したにも関わらず、ある種王道を突っ走っていると誰にも言わせなかったがためにこの案が通ることになったのだから、葵の眉間に浮かんだ皺を無視した数人の根気には脱帽するしかない。
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