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「えっちゃん、おはよー!」
静かな家に鳴り響いたインターホンに、主人を出迎える飼い犬の如く飛び出した美桜は、紺のブレザーを着た江崎 葵の姿にぱっと顔を輝かせた。
切れ長の瞳が、美桜の笑顔にすっと和らぐ。
「おはよう、さくら。相変わらずネクタイ下手だな」
「3年目なのにねぇ……」
「上向け、直してやる」
結び目は大きく、長さの合っていないネクタイに苦笑いした葵が、躊躇いなく指を伸ばす。美桜はハッと顔を強張らせ、施錠に託けて背中を向けた。
「大丈夫だって、どうせ体育あるし」
「……体育は5時間目だろ」
「あー、じゃあ後で直すよ。先生もそんな見てないだろうし、平気だって。行こう」
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