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* * * 「えらく、上の空だな」 冴え渡る青空はまるで昼過ぎのように。 少しばかり赤味が混じるそれをぼんやり眺めていた美桜は、咎める声にハッと葵を振り向いた。 見上げた横顔が、拗ねたように口を尖らせる。 美桜は後ろめたさの裏で少しホッとして、ゆるりと口角を上げた。 「ごめん。えっと……なんだっけ?」 「今日も家、1人なのか」 呆れた顔をした葵が視線を下げ、目が合う。 窓越しのそれを思い出した美桜はさっと視線を逸らし、遠くから駆けてくる小学生に目を細めた。 「うん、明日までは。なんで?」 「今晩はカレーだと朝から母さんが言っててな。良ければさくらも連れて来いと。好きだろう、母さんのカレー」 「……好き、だけど……」 学校という外の世界ではない。 葵の家、もしくは部屋という孤立した空間で、今の美桜には余計なことを口走らない自信がなかった。
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