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「ほんっとに仲良いよな、お前ら」
呆れたような凪の言葉に、美桜が手を止める。葵はひょいと肩を竦め、美桜の柔らかい髪に指を絡ませた。
「手のかかる弟みたいな感じ」
「……同い年の幼馴染み捕まえて言う?」
「同い年であることすら疑わしいけどな」
「生年月日一緒のくせにー!」
目を細めて揶揄う葵に、美桜がわっと声を上げる。
そうでもしなければ、強張る気持ちが顔に出てしまいそうだった。
なんて近くて遠い存在だろうと、胸が痛む。
笑う葵との距離は触れられるほどに近いのに、“弟”である美桜には、「欲しい」と言うことすら許されない。
「悔しかったら、もう少ししっかりしな」
それでいい、正解以上に正しいものなんてない、と。
約束を守り気持ちを殺す美桜は、揶揄う葵にべーっと舌を出してノートに視線を落とす。
葵はすっと目を細め、陽に揺れる美桜の髪を眺めていた。
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