掌から零れ落ちたものは……

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 視線の先にあるものに気づいた尊人は、見せつけるようにグラスを卓袱台に戻した左手を詠史に向かって差し出す。  「してるよ。――おまえとな」  目の前に差し出されたそれは、あの日手放した詠史の指環の片割れに間違いなかった。一生ものだからちゃんとしたものを贈りたくてオーダーメイドで作ったと言っていた指環。告白されたときに満開だった桜の下での始まりをいつまでも忘れないようにと、桜の花が刻み込んであった。
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