掌から零れ落ちたものは……
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時間が忘れさせてくれるだろうという願いも
虚
(
むな
)
しく、尊人以上に想える相手も現れない。忘れることを諦めて想い続けることを選んだ。
余所者
(
よそもの
)
の詠史を受け入れてくれたこの町で、ひっそりとなんでも屋のようなことをしてこの10年を過ごしてきた。同じ嗜好を持つ友もできた。 それでも、心は尊人を求めて悲鳴を上げる。そんな日々を繰り返すうちに、やっと幸せだった記憶を噛み締めて生きる術を見つけたところだった。
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