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「詠史くんどうしたの? トラブルでもあった?」
「あ、ごめん瑛子さん。偶然大学時代の友達に会ってちょっとびっくりしただけだよ。あんまり久しぶり過ぎて、驚いてバランスを崩したところを支えてもらったんだ」
心配そうに問いかけながら、ちらりと尊人を見る瑛子に笑みを浮かべて謝る。ぺろりと舌を出す詠史の様子に安心したように笑顔を返す様は、まるで母と子のやり取りのようで、ふたりが親密な関係であると窺えた。体勢を立て直してそっと掴まれた手を抜き取った詠史の言葉に、尊人もまた口元に笑みを刷いて小さく頭を下げる。
「お騒がせしてすみません」
「いいのよ。勘違いしちゃってごめんなさいね」
ふっくらとした顔に優し気な笑みを浮かべた瑛子が申し訳なさそうに頭を下げた。
「そうだ。詠史くん、久しぶりに会ったお友達ならここはもういいわよ。私が代わるからお祭り楽しんでらっしゃい」
にこにこと笑う瑛子が、立ち尽くす詠史から法被を脱がせる。
「あ、いや……でも……」
「気にしなくていいわよ。たまにはお客さんになるのも楽しいわよ」
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