第1章 天国と地獄

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第1章 天国と地獄

c016d9e3-3d88-4b21-9fb8-f45ce1ba22d8   中学3年生の麻耶は、小学1年のときからずっと無遅刻、無欠席だった。いや、病欠が小学3年と4年のときに1回あったか。が遅刻は、一度もない。いつも時間に余裕をもって学校に行っていた。小学校時代はクラスの登校一番乗りを目指していた。だが中学校の登校時間は、少しずつ遅くなっていった。もちろん遅刻したことはないが。ヤバイときはダッシュで滑り込んだ。  そして今日もいつものように重い足取りで、ギリギリの時間に登校するはずだった。  元気はつらつで登校していた小学校の頃とは違って、脳神経が悪魔のような不良たちに引き千切られそうな憂鬱な思いと、たしか日本史の絵巻に描かれていた、地獄絵の針山でも歩いているような苦痛を胸に、監獄の拷問所のような学校に行くはずだった。  だが今日は、行かなかった。  同級生たちの心無い言葉の暴力や、卑劣な嫌がらせなど理不尽な扱いの日々に、自分の精神は限界だった。  いじめっ子たちが我が物顔でのさばることを放置している、大嫌いになった学校生活から逃避できる、5月のゴールデンウイークの休みが花火のようにあっけなく終わり、また憂鬱な学校が始まる月曜日の朝。  今日もまたきっと、いじめが繰り返される! との恐怖心に、もう心身とも耐え切れなくなり、足が前に進まず、初めて登校しなかった。              
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