第1章 天国と地獄

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「その顔からして、どうやら、俺の話に納得できないようだが、いまからそれが本当だということを、その真実の一端を、君に見せてあげるよ」  そう言うと、左手を掴むや否や、空にふわりと飛び上がった。  驚いた。霊が、あの映画のスーパーマンのように、都内の空を高速で飛んでいる。  スーパーマンと違うのは、男がお決まりの黒マントやコスプレも、いやコスチュームを身に纏っていないだけだ。それとイケメンのスーパーマンと違って、ぞっとする顔もそうだった。  遠ざかる眼下の街並みに眼をやりながら、ふと思った。霊はみんな、空を自由に飛べるのだろうか? いや、そうではないようだ。男が手を離すと、そのまま真下に落ちていきそうな感覚だった。  ということは、空を自由に飛べる、この霊は、いったい何者だろうか?   疑念を抱いている間に現世が消え去ると、目の前に大きな光の輪が現れた。  眩しすぎて、眼を開けているのがすごく辛い。思わず、瞼を閉じた。がしばらくして、その閉じた瞼を通して光の強度が薄れていくのを感じとると、少しずつ瞼を開いた。まだ光の輪の中を飛んでいて少し眩しい。がその時間はスーパーマンの、いや化け物男の飛ぶ速さのおかげで、そう長くは続かなかった。         
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