第1章 天国と地獄

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 不本意だが、初めて男に同調した麻耶は、心の中で老人に文句を言っていた。  当たり前だろ。だれが中学生の美少女が、 こんな氷のような不気味な顔の男と交際をましてや結婚なんか、するわけないだろうが!!    じいさん、わたしを、いったい何歳だと思っているの? あんたの皺だらけの八の字のようなたれ眼は節穴か? このボケ老人が!   「わたしは、中学3年生です。こ の人とは、今日、初めて出会いました」  麻耶は、変な誤解をされないよう、大きな声で口を挟んだ。 「なるほど、初めて出会った日に、二人で首を吊って自殺したというわけか?」  あのなっ、くそじじい! なんで 、この氷河のような顔の男と無理やり引っ付けようとするんだよ!   麻耶は腹を立てて、老人を心で睨みつけた。いや心と同じように、たぶん表情にも出ていたかも。  インチキ天国で初めて出会った霊が、こんなボケ老人とは、この先が思いやられる。  別の意味で急に心配になった。礼拝に行く度に耳にタコができそうなほど牧師の説法を聞かされて、すっかり信じるようになっていたのに、完全に騙されていた怒りと寂しさに加えて、こんな変な老人までも相手することになる羽目になるとは。  キリストの代弁者かのように振舞い、たいそう偉そうに神の世界を説いていた牧師への怒りが、また頭に沸いてきた。   
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