第1章 天国と地獄

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 今頃、それを知った担任のおばさんが、いや、不良たちの悪行をいつも見て見ぬふりをしている、事なかれ主義の担任の先生が、母親に連絡しているかもしれない。  その通報に驚いた母が、自分に電話してくるのは間違いない。そう考えてスマホの電源を切り、家に置いてきた。  学校では1時間目の授業が始まっている、午前9時過ぎ。体を引き寄せられるように、ここにやってきた。やってきたのは、緑の葉がうっそうと生い茂る都内のとある公園だ。地球温暖化が原因なのだろか? まだ春なのに季節外れのうだるような夏を思わせる強い日差しを避けるように、日陰を選び公園の奥に歩を進めた。     そして、その林で細い首を吊った。が、選んだ木の枝が、どうも悪かったようだ。  このスマートな体さえも支えきれずに、意識が飛んで目の前が暗くなった瞬間だった。ほぼ同時に枝が幹の途中からボキッと折れて、落ち葉で埋め尽くされた地面に落とされていた。  すると、タイトルは思い出せないが、何かの映画で見たことのある幽体離脱が起きた。霊になった麻耶は体からすーと抜け出ると、細い首にベルトを巻いて林の地面に倒れている自分の肉体を、呆けたように見ていた。         
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