第2章 心の旅

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 あの殺風景な天国で暮らす前に里帰りや、観光地巡りでもして、今度こそ沈んだ心を癒してくれるのか、と期待していたら、男が連れてきた場所は、古びた小さなアパートだった。なぜ、こんなアパートに? と巡らせていると、男に連れられて一室に入った。  若い母親と兄妹が、食事をしている最中だった。その食事をしている場所、タンスや押し入れに収納できないのか? 様々な物があふれた狭い部屋が 、この家族の食堂兼、寝床だった。 「お母さんは、食べないの?」  小学3年生の妹が心配そうな顔で、やせ細った母に訊いた。  中学1年生の兄は、黙って食べていた。 「お母さんは仕事場で食べてきたわ。これも、二人で食べなさい」  優しい口調で吐いたときだった。  母親の胃袋から、お腹が空いた、と腹の虫が訴える音が、小さく聞こえてきた。食事に夢中の妹には聞こえなかったようだが、兄は聞こえていたのか、顔を曇らせながら食べていた。  この一家は、母子家庭だった。いま日本全国で子供の貧困が大きな社会問題なっている家庭の1つだった。特に、沖縄の子供の貧困率は全国一、最悪だった。         
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