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厚化粧をしていた母親が腰を上げた。
「それじゃ、行ってくるわ」母親の出かける声に、「お母さん、行ってらっしゃい」
兄妹が同時に声を出して見送った。
母親は、日中のパートの少ない収入だけでは生活できないので、夜も働いていた。
「美香、まだ、お腹が空いている。朝に早くならないかな」
妹がお腹を押さえながら声を零した。
兄は聞こえているはずだが返事をせずに、食器類を片付け終えたテーブルに教科書とノートを並べていた。
「でも、朝ごはんを食べても、もう学校には行きたくない」
泣きそうな声を続けてきた。
「駄目 だよ、真美。何のためにお母さんは、昼も夜も働いているんだ? 僕たちを学校に行かせるためだろ」
妹と眼を合わせた兄は、言い聞かせるように強い口調で話し聞かせていた。
まだ中学1年生なのに、3年生の自分よりもしっかりしていた。
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