第1章 天国と地獄

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 霊になってもスケベだとは。生きていた頃は、もしかして、あんた、変態男だっただろう? と心で、男の顔に罵声を投げつけた。 「ど、どうして、わたしを助けようとしたのですか?」  麻耶は震える口で訊き返した。 「馬鹿野郎! 自殺しようとしている子供を見て、知らんふりできるか」  男が物凄い眼で睨みつけながら、恨めしや~、と幽霊の定番のセリフではなく、化け物に不似合いな殊勝なセリフをまたも言ってきた。 「でも、わたしは、死にたくて、自分で死んだのです」  反発した声で言い 返すと、両手で顔を覆い、腰を屈めて涙を頬に零した。  その泣いている姿を眼にして気の毒にでも思 ったのか、スケベ霊は曇った顔をして見ていた。が、それはほんの僅かな間だった。
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