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「どういう事情かは知らんが、女子中学生が自殺する理由は、だいたい見当はつく。その眼が語っているよ。いじめを苦にして、自殺したって」
皮肉を滲ませてはいるが、自殺したことを気に掛けるような口調を聞いているうちに、麻耶の怯えは次第に治まり始めていた。
見た目の姿は恐ろしいが、どうやら悪い霊ではないようだ。スケベの疑念はまだ残ってはいたが。
「それで、なんで、いじめられていた?」
麻耶は答えたくない、という顔で沈黙した。
いじめの光景が、また脳裏に浮かんできた。沖縄から東京都内の中学校に転校してきたとき、初めはクラスメイトたちは暖かく迎え入れてくれた。が、その穏やかな生活はそう長くは続かなかった。
この白人のハーフ顔を見て、黒人兵に沖縄の若い女性が強姦殺害されたとのニュースが流れると、自分も海兵隊に強姦されて生まれた娘だ、と酷いデマが拡散し、学校の空気は一変した。
汚い、キモイ、早く死ね、と心無い言葉の暴力、顔への容赦ない唾吐き、エスカレートする壮絶ないじめに 、心身とも限界だった。
そして、首を吊った。
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