第1章 天国と地獄

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「残念だが、おじいちゃん、おばあちゃんには会えないよ」.  今度は気の毒そうな口振りで話してきたが、祖父母に会えないから自分の相手をしろ、という風にも聞こえていた 。 「時間が掛かっても、必ず見つけます」  投げてきた話の縄に、もう首を掛けられはしない、という口調で言い返し、反発する眼をやった。  その眼で、改めて男の容姿を見ると、意外にも若い霊だった。  初めて眼にしたときは、あまりの恐怖に怯えて、男の容姿を直視できなかったことと、少し老けた低音ボイスの声からして、変態スケベおじさんの霊だと思っていたが、まだ20前後の学生のようだ。    ということは、やっぱり自分と同じように、男が自殺したのは、もう間違いない、と思った。 「いいかい、君と話をしたくて言っているのではない。残念だが、君が天国に行っても、おじいちゃんとおばあちゃんに、会うことはできないのだよ。天国は、いうなれば、年代ごとに別れている。君が天国で会えるのは、長くても、せいぜい2~3年前に亡くなった人たちだけだ。おじいちゃんは7年、おばあちゃんは亡くなって5年も経っている。もう会うことは叶わない」  男が、衝撃の言葉を吐いてきた。        
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