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その話しぶりからして、どうやら口から出まかせを言っているようではないようだ。
それでも、とても信じられるような、話ではない。
「あの、どうして、そんなことがわかるのですか?」
早く立ち去りたい、という顔をしたまま、そんな話、信じられない信じたくないという口調で訊き返した。
「俺も天国に行くと、祖父母や親戚を探し回ったが誰も見つけることはできなかった。その理由を天国の長老のような、ある老人から聞いた。いいかい、みんなが想像しているような花に包まれた極楽浄土の美しい天国なんてのは、どこにもないんだよ。天国とは名ばかりで、ひどく殺風景な場所だ。風光明媚な場所ではない」
そこまで言い終えて、吐息を吐くように話をきると、また顔を覗くようにしてきた。
そしてまた、口を動かしてきた。
「まあ、地獄よりは、まだましだがね。人類が誕生して何億という人が死んでいった。いや、原人や他の生物たちも含めたら、とんでもない数だ。それが同じ天国に集まっていたら、いったいどうなると思うかい? 渋谷交差点の混雑レベルではない。だが天国では、広い砂漠で人を探すようなものだ」
男は重い顔をして 、言葉をつないで説明してきた。
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