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伏せた長い睫毛はしっかりと瞑られていて、起きている気配はなさそう。
これは今までのような狸寝入りではなく、本当に二度寝をしてしまったのかもしれない。
「……起きないの?」
私は彼の顔近くまでしゃがみ、ツンッとさっきみたいに頬を突いてみる。
それでも瞼は開くことはなく、ずっと瞑ったままだ。
「疲れているのかしら」
ベッドに肘を置き、両手で頬杖をして高柳の寝顔をジッと見つめる。
思い返せば、彼が激務の毎日を送っていることは妻である自分が一番よくわかっているつもりだ。
それに加え、藤堂という厄介な男の相手もしていた。
あんな嫌な男の相手をするなんて、いくら強靭なメンタルを持っている高柳でも、疲弊する相手だったと思う。
その上、我儘でヒステリックな妻の私の相手もして……
「ストレスが溜まり過ぎて白髪ができてたりして……」
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