はじめてのデート

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「俺は何番目の男?」 彼がリクライニングを直しながら言う。 「ごめん。マナー違反で。 ただ……無防備すぎる」 「…桜月さん…」 「誘っておいて言うことじゃあないが」 ハンドルを軽く叩き、彼は言う。 「まず、男の車を信用するな」 「…?」 「乗ったら最後、どこへ行くかわからんだろ」 「でも桜月さんだし…」 「俺が羊だと? 狼かもしれんのに、いきなり寝るな」 「…」 「挙げ句の果てに、男の一人暮らしに、訪ねても良いと答える… 想像してたより、軽い娘なのか…… 逆に、よほどウブなのか」 「…ごめんなさい…」 「…いや…。 嫉妬した」 「…え?」 「早織ちゃんの過去を彩った男の影に」 「…いません」 小さな声で私は言った。 膝でハンカチを握りしめて。 「……ごめんなさい…物知らずで… お付き合いしたことなくて…… 重いですか……?」 「…いや…ごめん。 早織ちゃんはかわいいから」 「…つまんなくないですか」 「つまんない?」 「…」 桜月さんは、私を見つめた。 「…良かった…」 安堵の溜め息。 「え?」 「……こんな、かわいい、おとなしそうな子が、初対面の男に告白され、ほいほいついてきて… 見た目よりスレてるかと思った」 「違います!桜月さんだから! 信じているから!」 「…すまない」 彼は悲しげに目を伏せた。 「でも、初めての彼氏が、嫉妬深いのは、悪いな」 やや、苦笑。 「俺がなりたいのは、早織ちゃんの最後の男だから」 「…え?」 「全部、俺のものになってくれ、いつか…」 「桜月さん?」 「俺こそ、重い男でごめんね。 でも、早織ちゃんが愛おしくて…」 リクライニングを倒しっぱなしの私を見下ろす優しい瞳。 「大事にするよ」
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