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「かかかかかか……(感じてる私……ですか!!)」
今、私の頭の中ではカレイやヒラメが舞い踊っていた。
似たようなもので区別がつかないが、たぶん、カレイとヒラメです。どっちがどうかわからないがともかく飲めや歌えや的なものです。
「……(どのようなものが感じてる私なのか)」
「……」
桜月さんは押し黙った。
私は脳内のカレイやヒラメを消し、代わりにイルカのジャンプとかアシカの曲芸を思い起こそうとした。
そしてつい呟いていた。
「まぐろ……」
「……ん?まぐろ?」
2人の間に完全なる沈黙が大きく横たわった瞬間であった。
「いえ……あの……」
マグロとは。
つまり、スズキ目・サバ科マグロ属。
冷凍になると全く動かない、かちんこちんな大型肉食魚。温暖な気候を好み、外洋性 回遊性……紡錘形……つまり寸胴な形をしている。
「早織ちゃん?」
「……えっと……あの……頭の中に……カレイとヒラメとイルカとアシカとマグロが……」
「水族館に行きたいの?」
「い、いきたいっ……ですっ!」
裸で組み敷かれたまま、私は一生懸命言った。
「水族館に行きたいです!」
要するに失言を払拭すべく頑張った結果、幼稚園児がパパにお出かけを強要しているような会話になってしまった。
「それは良いかもね」
が、桜月さんは興を削がれたという顔は一切しなかった。さすがです。
「じゃ、起きようか」
「は、はい(ごめんなさいい)」
「早織ちゃん」
ちょっとしょんぼりしていたら、右二の腕を軽く引っ張られ、そのまま左の肩まで抱き寄せられる。
ちゅ
(ひゃあああ)
「じゃ、一緒にお風呂入ろか」
(ひゃあああ)
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