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「ふう~。お腹いっぱい……あ!」
窓の外を見たら夕陽が沈んでいく。
「きれ~い」
二人、並んで夕暮れに近づくのを見守る。
「あ、星」
「ヴィーナスだ」
「ヴィーナス?」
「金星は美の女神だから」
「じゃあ、お祈りしとこ」
横にいる私を振り向くと
眼差しで愛してくれる。
「帰したくないな」
「え」
「……いや……////。
かわいいな、と言った」
ふ、と微笑む桜月さん。
「そろそろ出ようか。送るよ」
「あ、はい」
゜・*:.。..。.:*・゜゜・*:.。..。
車に乗るときもだけど、降りるときもドアを開けてくれる。
添えられた手。
手のひらというより、指が重なる。
「桜月さんは、海外生活があったんですか?」
「ん?
ああ。父親が転勤族だったので、日本には二十歳過ぎてから帰ってきた」
(だから
言葉遣いが洗練されていて
エスコートも様になってるのかな)
アパート前で手を取られ、唇が近づく。
手の甲へのキス。
「部屋に入って」
「寄りますか?」
「男を家に入れるのは感心しない」
「……はい……」
(また怒られちゃった)
じゃあ、と走り去る車を見て、私は溜め息をついた。
ため息というより、吐息だ。
(次、いつ会えるのかな)
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