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熱はないけど、頬が…赤い……
おたふく風邪?」
「…違います…」
「帰ろう。
なんか……無理したらダメだぞ」
「無理してないです」
「送るよ」
彼はレシートをつかんだ。
「行こう。たてる?」
タクシーを呼び
私を乗せる。
私は切なくて
桜月さんの指にふれた。
「ん?」
(帰ったら会えない…)
今度はいつ会えるかわからない。
゜・*:.。..。.:*・゜゜・*:.。..。
タクシーから降りる。
「部屋まで帰れる?」
私は小さく首をふった。
「…」
彼は黙って私の腰を支えるように抱く。
マンションのエレベーターに一緒に乗り……
部屋の前についたが
(鍵を開けたくない)
開けたら、桜月さんは帰ってしまう。
「……ドア、早く」
桜月さんが呟く。
「開けなさい」
私は、切ない気持ちでドアを開けた。
「帰ったら…」
「…ん?」
「帰らないで…」
しかし彼はドアを開けてしまった。
゜・*:.。..。.:*・゜゜・*:.。..。
ドアを開け、内に入る。
入ったと同時に抱きすくめられた。
「早織ちゃん」
何回も名前を呼ばれ
髪を乱される。
「早織ちゃん、好きだ。
君が好きだよ」
「桜月さんっ…」
頬を両手で包まれる。
少し閉じ気味の桜月さんの瞳。
(…あっ…)
柔らかく触れてきたのは…
(これは唇?)
唇?
キス?
優しく、額に落ちてきた。
軽く吸うような音がして、ふんわりとした感触が離されていく。
ぎゅっと抱きしめられていて。
私は深く吐息をついた。
(眠っちゃいたい)
桜月さんの胸の中は温かくて心地良い。
「おふとんみたい……」
「ふとん?」
桜月さんが苦笑している。
「俺はこれで、おふとんか……」
包むように、ふんわりと抱きすくめられる。
髪をそっと撫でられた。
「かわいい……好きだよ」
「私も…」
「ん?」
「桜月さんが……」
“すき”って言おうとした唇に……
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