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「お花の名前も知っているんですか」
「たまたまだね。
ギリシャ原産。名前の由来は『春の訪れ』だ。日本の感覚で言えば芝桜に近い。オールラウンドというか、匍匐して増えていくので、野原一面が、白と淡いピンクで染まり、甘い香りが全土を覆う」
「詳しいんですね」
「実家がギリシャなんだ、今」
「はい?!」
「前に、実家が遠いって言ったよね。うちの親は転勤族なので、今は実家が地中海なんだよ」
「……」
(転勤って、名古屋とか大阪ではないんですか)
まさかの世界的規模だった。グローバルなご家庭の出身なので、あんなにレディーファーストが身についているのだ。
「……」
(ますます、私の中のカラムーチョが……カラムーチョへの愛が……)
「ふ」
桜月さん、笑う。
「な、なんですか(カラムーチョへの愛への笑いですか?いや、まだ伝えてないから良いかな。でもカラムーチョは最高ですよ、桜月さん)」
「早織ちゃん。…俺の子供みたい」
(あああ。カラムーチョへの愛へのツッコミではなかったのですね)
私は慌てて宣言した。
「桜月さんの髪は私が乾かします!」
「わかった。じゃあ楽しみにしてるよ」
桜月さんは、くすくすと笑った。
お風呂に行った桜月さん。
シャワーの音が響く。
な、なんかドキドキしちゃう。
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