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「行ってきます、お兄ちゃん」
妹は元気に出かけて行った。それが僕が妹と顔を合わせた最後だった。
「お兄さん、ごめんなさい」
妹の葬儀にも来ていた彼女の同級生が泣きながら謝る。僕は葬儀の後、彼女から呼び出され、家の近くの公園にいた。
「エミちゃん、君が謝ることはないよ。ミキの死は事故だったんだから」
まるで今も納得できていない自分へ言い聞かせるようだと思えた。けどそれは目の前で泣いている彼女も同じなのだろうと……そう思っていた。
けど、違った。
「ミ……ミキは、自殺なんかじゃない……アイツに殺されたんだ」
「……どういう意味、エミちゃん?」
僕はエミちゃんに根掘り葉掘り質問して、全てを知った。
妹は……ミキは、ある男に言い寄られていた。だけど、彼氏がいた妹はソイツの相手をしなかった。
けど、ソイツはまともじゃなかったんだ。ソイツはミキの彼氏をターゲットにして、暴力や恐喝、しまいには彼の足を折って二度と歩けない状態に……
ミキはその全てが自分のせいだと思って……
「クソッ! なんでそんな……!」
「ミキ、お兄さんには言いたくないって……絶対に心配するからって……」
「だからって!」
声を荒げて吠えるように叫んだ。
エミちゃんは、ビクッと体を動かして縮こまるようにしながら何度も「ごめんなさい」 と、謝っていた。
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