囚われのプロポーズ

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ーー四年前の夏。 あの時のことは忘れもしない、今もずっと……。 それは私の素肌を通って身体の内側まで溶かしてしまいそうなお日様の光がとてもとても強い暑い日だった。 大学生だった私は幸坂(こうさか)ゆりに「今夜家に来ない?」とお泊まりの誘いを受けた。 ゆりとは学部もサークルも同じで常に一緒に行動している仲で、彼女とはレポートを書くということを一応名目にして、お互いの家をよく行き来していた。 「行く行く」 今日はアルバイトもない。 「17時過ぎに行くね」と言い、サークル帰りの私たちはゆりと校門で別れ家まで自転車を飛ばした。 一人暮らしのマンションまで自転車で五分。 ゆりは反対方向なのでいつも校門で別れるが、彼女の家も五分ほどの距離にある。 今は大学二年の夏休み。 大学にも慣れてきて、夏休みは課題はあるものの少なくファミレスのフロアのバイトと、卓球サークルのために大学へ行く今、なんだか大学生というものを私は謳歌している気がしていた。 築9年の1K造りのマンションへ着くと、自転車をとめ鼻歌混じりに私の部屋のある3階へ駆けのぼる。
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