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『会社に戻ったら大変なことになってた。展示会の招待状の文字に誤植があって、今いるメンバーで手作業で直すことになった。帰るのが遅くなるから、先に寝てて』  帰宅の時間は書かれていない。本人も分からないのかもしれない。 『わかった。大変だね。なにか俺にできることがあったら言って』  有が急いでメッセージを打つと、すぐに返信が来た。 『ありがとう。気持ちだけで充分嬉しい。待たないで寝ててよ。明日も会社なんだから』 『わかった。おやすみ』  返信したあとで、明日の午前中に鍵屋が来るということを思い出した。真紀との昼食後、スマホで鍵屋に予約を入れたのだ。午前中は会社を休んで、家にいなければならない。  会社には明日の朝、連絡することにした。明日はそれほど忙しくない。溜め込んでいる仕事もなかった。  有の鬱々としていた気分は晴れていた。自分の記憶に問題があったことはショックだったが、もう亘のことを疑わなくていいと思うと心がとても軽くなった。
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