the truth

1/15
前へ
/140ページ
次へ

the truth

翌朝の七時に有は起きた。隣のベッドには亘の姿がない。寝室の外からは生活音も聞こえてこない。  有はベッドのヘッドボードに置いてあったスマホを手に取った。 『やっと作業が終わったよ。まだ始発がないから、会社でちょっと寝てから帰る。今日は休むことにした』  亘からのLINEは四時に着信していた。 『お疲れ様。俺も午前中休むことにした。業者に来てもらって部屋の鍵を替えてもらうんだ。十二時までに帰ってこられる?』  余裕をもって会社に着くには、ここを十二時までに出なければならない。  LINEのトーク画面を眺めて待っていたが、いつまでたっても自分のメッセージが既読にならない。まだ寝ているのかもしれない。有はベッドから出た。  朝食を摂ったあと、洗濯ものをして、リビングと寝室に掃除機をかけた。 八時四十五分になって、有は所属している総務部に直通で電話をかけた。有が名乗ると、「あ、穂村か」と電話に出た男の口調が砕けたものになる。藤崎だった。 手短に午前中だけ休みたい旨を伝える。 「午前中だけ? わかった。一時には来るんだよな?」 「はい。突然すみません」     
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

692人が本棚に入れています
本棚に追加