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the truth
翌朝の七時に有は起きた。隣のベッドには亘の姿がない。寝室の外からは生活音も聞こえてこない。
有はベッドのヘッドボードに置いてあったスマホを手に取った。
『やっと作業が終わったよ。まだ始発がないから、会社でちょっと寝てから帰る。今日は休むことにした』
亘からのLINEは四時に着信していた。
『お疲れ様。俺も午前中休むことにした。業者に来てもらって部屋の鍵を替えてもらうんだ。十二時までに帰ってこられる?』
余裕をもって会社に着くには、ここを十二時までに出なければならない。
LINEのトーク画面を眺めて待っていたが、いつまでたっても自分のメッセージが既読にならない。まだ寝ているのかもしれない。有はベッドから出た。
朝食を摂ったあと、洗濯ものをして、リビングと寝室に掃除機をかけた。
八時四十五分になって、有は所属している総務部に直通で電話をかけた。有が名乗ると、「あ、穂村か」と電話に出た男の口調が砕けたものになる。藤崎だった。
手短に午前中だけ休みたい旨を伝える。
「午前中だけ? わかった。一時には来るんだよな?」
「はい。突然すみません」
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