the truth

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 藤崎はこれといって嫌そうな声は出さなかった。ほっとして電話を切る。  十時を過ぎたところで、鍵の業者がやってきて、玄関の鍵の工事を行った。三十分程度、有はその場に立ち会い、新しい鍵二本を受け取った。そのあと冷蔵庫にあるものでオムライスとコンソメスープを作り、亘の分にだけラップをかけた。 早めの昼ごはんを食べてからスマホをチェックすると、ちょうど亘から着信があった。 『寝すぎた。今から帰る』  今の時刻は十一時十五分だ。亘の会社からここまで、電車と徒歩を合わせ三十分程度だ。なんとか間に合うだろう。 『鍵、替えたよ。エントランスは古い鍵が使えるけど、玄関は開けられなくなってる。家にいるからインターホン鳴らして』  亘に新しい鍵を渡さないと、有はこの部屋から出て行けない。  歯を磨いてスーツに着替えている間に、十一時三十分になっていた。まだ帰ってこないだろうな、と思っていた矢先、インターホンが鳴った。  ――あれ、思っていたより早い。LINEの連絡が遅れただけか。  有は一応、リビングの壁にあるドアフォンのモニターを確認した。 映った人物は亘ではなかった。 「伯母さん」  有は、ドアフォンの通話ボタンを押した。 「ドアが開けられないわよ。開けてよ、有ちゃん」     
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