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ここで彼女を締めだしても、亘がそのうち帰ってくる。鉢合わせされるのも面倒だった。亘が帰ってくるまえに伯母を一時的にでも納得させ帰ってもらわなければ。
ドアを開けたとたん、伯母がずかずかと部屋に入ってくる。立ち話をさせるつもりはなかったが、あまりの遠慮のなさに有は鼻白んだ。
コーヒーを淹れている時間もなかったので、麦茶を二つのグラスに入れてダイニングテーブルに置いた。着席したあと、向かい側に座る伯母に、単刀直入に言った。
「玄関の鍵は替えたんです。もう勝手に入ることはできないですよ。古い鍵、すべて返してください」
厳しい声を出したつもりだったが、伯母は微塵も怯んだ様子を見せない。薄笑いを浮かべて、「なんで?」と聞いてくる。
「この家は私のものでもあるのよ?」
自信たっぷりに話す伯母に、有は戦慄した。この人とは話が通じない、常識が通らない――そんな恐怖だった。
「意味がわかってないようね。加代子が宝くじを当てたのは、私のお陰なのよ」
「え?」
それは初めて聞いたことだった。有の母親は、そんなこと一言も言っていなかった。
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