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寝起きの無防備な顔を見られるのは自分だけだと思うと、無性に嬉しくなる。
不意にぐいっと腕を引っ張られ、有は亘の体に乗っかる体勢になった。そこから先は動きが速かった。布団のなかに引き込まれ、亘の腕が背中に回ってくる。
「もうちょっとゴロゴロしたい」
甘えた声で亘に言われ、有は浅く頷いた。
映画は次の回でいいやと思う。
有は亘を抱きしめ返した。起きたばかりの彼の体は温かいを通り越し熱かった。
自然とお互いの顔が近づいた。小鼻同士を擦り合わせ、同時にふっと笑った。
亘の両頬に手を添え、有から彼に軽いキスをする。薄い唇は少しだけかさついていた。
「有」
優しい声で呼ばれ、有は目を開けた。
「すきだよ」
耳元で囁かれる。
「俺もすきだよ」
間髪入れずに返事をする。たぶん、いやきっと、自分のほうが彼のことを好きなのだ。
軽いキスを繰り返したあと、亘の動きが止まった。もうキスの時間が終わったのだと思い、有が亘から体を離そうとすると、それを阻止するように足を絡められる。
片手で頭を引き寄せられ、今度は強引に口づけられる。唇に濡れた感触がして、有は驚いた。亘の舌が、有の唇を突いてくる。早く開けろよ、と促されている。
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