the truth

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「故意じゃないけど、私の運転で事故が起きたのは事実だったから――有ちゃんに恨まれたら嫌だなって思ったのよ。加代子とあの男には天誅が下されたんじゃないのかしら。大金を手に入れて俗物に成り下がったから」  あの二人は私を見下していたと伯母が呟く。 「贈与税がかかるからって、加代子はまとまった額をくれなかった。毎月八万円のお小遣いと、家族の食事会に招待してくれるぐらい。それも帰りの運転手をやるって条件付きでね」  伯母が空のグラスを弄んでいる。コンコン、とテーブルに底面が当たり、やけに澄んだ音が聞こえた。すごく場違いだ。 「でも有ちゃんは違ったよね。あんな俗物の子供とは思えないぐらい素直で。私のこと頼ってくれて信じてくれて。嬉しかった。だから有ちゃんからの期待を裏切らないように頑張ってきたじゃない? 後見人もちゃんと務めたし、家事も教えてあげたでしょう?」  伯母に話題を逸らされていると感じた。軌道修正すべく、有はもう一度質問した。 「伯母さんは事故のとき、運転席に座ってた。あのとき何があったんですか」  真実が知りたかった。車中で何があったのか、思い出せそうで思い出せない。手がかりが足りない――そんな気がする。  有は軽い眩暈を覚え、慌てて椅子に座った。 「あの日はね――いろいろと悪い条件が重なったのよ。夜で道は暗かったし、雨も降っていたし。前をトラックが走っていたわ」     
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