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驚きはさほどなかった。以前伯母は興信所で亘のことを調べたと言っていた。そのときに知ったのだろう。
「俺たちは男同士です。結婚もないし、相続なんかも発生しない」
「養子縁組があるじゃないの」
「俺も亘も、あんたみたいに金に執着してない!」
「だったらあなたの相続した財産、ぜんぶ私にちょうだいよ。今までは贈与税とか相続税で損するのが嫌だったわ。だから一か月ごとにちょっとずつ貰ってたけど。もうお小遣いはくれないんでしょ?」
「あげるわけないだろ」
一か月ごとにちょっとずつ――そのフレーズに引っ掛かりを覚える。
「ばあちゃんの介護、本当にしてたんですか」
四年間、伯母の家に上げてもらったことがない。祖母にも会わせてもらえなかった。
伯母が急に、バツが悪そうに目を逸らした。
「二か月前にリハビリで入院したのは本当よ。階段で転んで骨を折ったの。それまでは元気だった。一人でどこへでも行けてたわ」
「じゃあ伯母さんは働けたんですね」
伯母の言うことは嘘だらけだ。信じていた自分が馬鹿みたいだった。
「もう帰ってください」
有は椅子から立ち上がった。が、足に力が入らない。ふらついて椅子の座面に尻もちをついた。瞼が急に重くなる。
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