French kiss

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 有の胸は一気に高鳴った。おずおずと口を開けると、あっという間に亘の舌がなかに入ってきた。お互いの舌が絡み合い、粘膜の絡む音が鼓膜に響く。硬口蓋を舌先で舐められ、有はつい声を漏らした。官能を刺激するような舌の動きに、有は期待せずにはいられなくなった。  ――もしかしたら、このまま。  それならそれでいい。嬉しい。したい。  執拗なキスで、舌が痺れてくる。そのこと自体に、有は陶酔した。こんなキスはしたことがなかった。亘とは一度も。でも彼の舌は有の口内にとても馴染んでいる気がする。  羞恥よりも、欲求が上回った。有は亘の下腹に、自分の股間を押し付けた。もうそこは興奮で高まりかけていた。嬉しいことに、亘のものも反応していた。手でも確認しようとしたとたん、亘の腕が有から離れ、胸を押し返された。恋人の体温がいきなり遠ざかり、有は呆然とした。拒否されたのだ。ここまで来て。 「――なんで?」  お互いその気になっていたはずなのに。 「今日はやめておこう」  亘は肩を竦め、急に冷めたように苦笑した。 「でも、勃ってるじゃん」  自分とのキスで亘も興奮してくれたのだ。簡単に引き下がれない。  だが、亘は有の指摘を「朝勃ち」の一言で一蹴した。彼が嘘を言っていることは明らかだ。ベッドに入って抱きしめ合ったとき、まだ彼の股間は兆していなかった。 「こういう生理現象でしたくない」 「俺はそれでもいいよ」     
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