I'm so happy it's frightening.

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 ふたりはシャワーを浴びたあと、寝室のベッドの上に並んで座った。 「俺が記憶を無くした理由、言うよ」  有から口火を切った。タオルで髪を拭いていた亘が手を止め、有の顔をジッと見た。 「幸せすぎて怖いって言ったのは俺の母親なんだ」  有は手短に、両親の死亡事故の説明をした。 「事故自体ははっきり覚えてなかったのに、その言葉だけは心の底に埋まってたんだと思う」  過度な幸福が怖かった。そこそこの幸せのほうが安心できた。有は大金を持っていても、人生の節目――大学に受かるとか、就職先が決まるといったことにも、そこまで喜びを感じてこなかった。真紀と付き合っているときも、楽しいことや嬉しいことはあったが、幸福感で満たされたことはなかった。幸せで恐怖を覚えることなんか今まで一度もなかったのだ。亘を好きになるまでは。 「亘とセックスしたあと、すごく怖くなったんだ。これ以上幸せなことはない。あとはもう失うだけだって」  失うぐらいなら、亘に片思いをしていたころに戻りたいと強く思った。幸せになりすぎると、母親のようになる――そんな強迫観念があったのは確かだ。     
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