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亘にしてみれば迷惑千万だろう。セックスするたびに友達に戻ってしまうのだから。
「三回も忘れて、ごめん」
有は亘のほうを向いて謝った。
「謝るなよ。なんとなく、そうなんじゃないかって思ってたよ」
亘がふっと笑って、有の肩を撫でた。有はどきりとした。服の上からでも、彼の指が熱いとわかった。
「幸せすぎて怖いって言ったときの有は、本当に怯えてたから。有にとって幸せの最高値って俺とセックスすることなのかなって思ったんだ。夏堀さんにさ、前に聞いたことがあるんだ。有と最後までしたことがあるかって」
「――あ、それ夏堀さんからも聞いた」
「有はセックスそのものじゃなくて、俺とするから幸せすぎて怖いんだろうなって」
男冥利に尽きるよな、と亘が付け足して笑う。
「そこまで俺のことを好きになってくれたんだって思うと嬉しかった。だけど俺のことを信用してくれてないのかな、とも思ったんだ」
「え、そんなことないよ」
それは心外だった。亘と大学のベンチで話したとき、初めて信頼できる友達ができたと感じたのだ。
「まあ最後まで聞けよ。どちらかが女だったらこんなに有は怖くならなかったのかもしれない。男と女なら、最終的な幸せって一般的には結婚とか子供ができることだろう? セックスは途中段階だ」
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