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――石動と今年も仲良くしたい、なんて言ったら引かれるよな。
ドン引きされない願い事がすぐに思い浮かばない。有は亘の願い事に乗じることにした。
「俺も同じだよ。今年は彼女が欲しいって」
神社で嘘を吐くなんてなあ、とため息を吐きたくなった。
「穂村は『彼女』なのか? 本当に?」
亘が有の顔を疑うように見てくる。
「え?」
言われたことがすぐに理解できない。
「『彼氏』じゃなくて? 俺は彼氏が欲しいよ。ここの近所に住んでる彼氏」
有は思わず、手に持っていた甘酒を揺らしてしまった。飲み口から勢いよく白い液体が飛び出る。膝に甘酒がちょっとだけ落ちた。買ったばかりのボトムだったが、汚れを気にする余裕なんてない。
期待しちゃいけない。こんな都合の良いこと起こるわけがない。でも、亘の知り合いの男で、ここの近所に住む人物を自分以外知らない。いやだがしかし。いや、でも。
「――俺も『彼氏』だった。同じゼミをとってる『彼氏』が欲しい」
「俺じゃん」
亘がニッと笑って、有の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「じゃあ、来年も来ような」
亘の手が頭から頬に下がってくる。頬を両手で挟まれ、即行でキスされた。
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