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「これは恋だって気が付いたのが、一昨年の花火大会なんだ。有は夏堀さんと来てただろ? 俺は付き合い始めたばかりの子と行ったんだけど、ぜんぜん楽しくなくてさ。有と会ったとき、おまえと花火が観たいって思ったんだ」
――俺と同じタイミングじゃないか。
有が亘への恋心に気が付いたのも、一昨年の花火大会だった。
「ずっと友達でいいって思ってたんだ。男同士だし、有はノーマルだし、俺も今までは女としか付き合ったことがないし。でも一緒にいるうちに気持ちが抑えられなくなっていってさ。おまえめちゃくちゃ可愛いんだよ。なんかもう、近くで見てると触りたくなって堪らなくなってさ」
我慢できなくなったように、亘が頬をすり寄せてくる。
「俺、有の強いところに憧れてたんだ。今もだけど。一見気弱そうに見えるけど、芯がしっかりしてる。意見がブレない。ゼミでもそうだったし、俺に対してもそうだった。他人の意見にもちゃんと耳を傾ける。ジッと相手の目を見てさ――もう大好きだよおまえ」
興奮したように、亘が手を握ってきた。
有も興奮してきた。胸がどきどき高鳴り、この真冬だというのに、肌がじわりと汗ばんだ。コートを脱ぎたいぐらいだ。
「そろそろ帰ろうか」
亘が椅子から立ち上がった。
有は右手に持っていた甘酒のカップに口をつけた。いい具合に冷めていたので急いで飲み切った。
「一緒に捨てるよ」
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